大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和34年(オ)1027号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人江口繁、同内田清治の上告理由第一、二点について。

所論手形振出行為が村議会の議決がないため、または所論法律に違反するため、無効または違法であるとしても、村長が村を代表して手形の振出をなすこと自体は、外見上村長の職務行為とみられるから、民法四四条の適用なしということはできない。従つて原判決が、民法四四条一項における「職務ヲ行フニ付キ」とは、当該行為の外見上法定代理人または代表者の職務行為とみられる行為であれば足り、その行為が法人の有効または適法な行為であることを要しないとして、上告町の前身たる入野村村長草野日出太郎の判示約束手形二通の振出行為は右職務行為に該当し、上告町に本件不法行為上の責任がある旨判示したことは相当である。所論大審院判例は、後に同院判例(大審院昭和九年(オ)第五三三号、同年一〇月五日第二民事部判決、同昭和一四年(オ)第八一八号、同一五年二月二七日判決、民集一九巻四四一頁参照)によつて変更されているところであり、所論大審院判例を引用して上告人が主張する見解は、採用できない。論旨は、ひつきよう独自の見解に立脚して原判決を攻撃するに帰し、原判決に所論の違法は存せず、論旨は採るを得ない。

同第三、四点について。

原判決が本件損害額について、被上告人にも判示の如き一半の原因があるとして右過失を斟酌し、上告人が支払うべき損害額は金百万円が相当である旨判断したことは、原判決認定の事実関係からこれを是認できるところである。論旨はひつきよう独自の見解に立脚して原判決を攻撃するに帰し、原判決に所論の違法は存せず、論旨は採用できない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 藤田八郎 裁判官 池田 克 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一 裁判官 山田作之助)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例